1735707 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

Ogni giorno sara` sereno!

Ogni giorno sara` sereno!

フィレンツェという町

フィレンツェは、イタリアのみならず世界でも超有名な、ルネサンス期に最盛期を迎えた歴史的都市である。
以前のコラムに書いたように、歴史好きからこの町に魅せられ、留学し、
そのまま結婚して住みついてしまった私だが、やはり想像と現実では全然違う。
これはイタリア全体に言える事だが、今回はフィレンツェに絞って、
かつ歴史やガイドで言われるような事を省いた、ここに住んで実感する事を書きたいと思う。

フィレンツェはトスカーナ州の州都で、イタリア旅行には必ずと言っていいほど登場するが、
都市としての規模は非常に小さい。
特に、その歴史的産物で中心地区が世界遺産に指定されているせいもあり、
近代的都市という面では遅れていると思う。市内の交通もバスのみで、
地下鉄は随分前から論議されているものの、今のところない。
変に掘ると、遺跡がでてきて大変な事になると言うが、ローマにできて何故できない、という反論もある
(現在、イタリアで地下鉄のある都市はローマ・ミラノ・ナポリのみ。
ローマでは遺跡を犠牲にしたという議論もあったが、都市生活はぐっと便利になったに違いない。
これは、歴史のある国ならではの問題だろう)。
しかしバスもサービスが悪いので、単車・車の利用者が多く、これが環境問題にもなっている
(ただし、中心街には平日昼間、許可がない車は入れない)。
となると、一番快適なのが自転車。
なので、中心街からはずれた大通りには自転車専用道が多く見られる。

また、中心地の建物は非常に古いものが多く、また上記の理由(保護されるべき歴史的遺産)で
そうそう改築もできない。ゆえに、水がでない、暖房がきかない等の問題が多い。
建物のみならず、中心地の多くは昔からの石畳。そこにバス・車・単車がガンガン取るので、
ボコボコ穴が空いている。そこだけをとりあえずアスファルトで埋めている(しかも、いい加減に)ので、
これが段差となって、自転車利用者はお尻が痛いし、通行人もよくつまづく。
また世界有数の観光地の為、物価が高い。高いと言うより、ぼったくりと言っても過言ではない。
まぁ、住んでる人は知っているので中心街で普段の買い物をしないけど。
物価の高さは、ヴェネツィアと並んでイタリア一であろう。ローマやミラノも観光地であるが、
他の産業もあるし、都市として進んでいるのでそれほどではない。
例えば、バスの切符はフィレンツェ1ユーロ・60分有効に対し、ローマは地下鉄・バス共通で
77セント・75分有効。カプチーノ平均1ユーロに対し、80セント)その他もろもろ、
住んでる者にとっちゃ敵わない事がヒジョーに多い。

周知の通り、この町は観光産業の町である。そして、留学生産業の町でもある。
他のコラムでも書いたとおり、イタリア語の標準とされるフィレンツェは語学学校が山ほどあり、
その他に美術関係(特に修復)、ファッション関係(実はグッチやフェラガモの本店もあるModaの町でもある)、料理・ワイン関係と、様々な専門学校に世界中から人がやって来る。
なので人口60万人といっても、それに住民登録してない留学生(他観光客、不法入国者も)で
実際はかなり多い。そこからくる生活消費、とくに家賃!で、貸せる部屋を持っている人はちょっとした稼ぎだ。そのせいで、ホームステイもビジネス感覚で温かみがない、という声もよく聞く。
私は幸い恵まれていたが、例えばシャワーの時間が決められたり、洗濯機使用は別料金とか!

観光の名所といえば、ドゥモ、ウフィッツィ美術館、アカデミア美術館・・・と数えだしたらきりがない。
もちろん、観光では名所をまわるのは当然だが、よく見てもらうといろんな事に気付く。
何気ない建物に、ほったらかしにされたフレスコ画の一部が残っていたり、
路地裏にひっそりと隠れたようにある教会、小さい路地の上にかかる建物間の廊下、
そんな路地の1階部分のスペースを稼ぐ為か木のつっかえに張り出した2階がある建物・・・。
そんな小さい所に本当の歴史を感じたりする。例えば15世紀のフィレンツェを描いた絵と比べてみても、
びっくりするほど本当にほとんど変わらない。
上に近代都市としては不十分と書いたが、ここまで残っているのはスゴイ事だとも思う。

また他の観光都市にはないフィレンツェの美しさは、町を囲む丘にあると思う。
ミケランジェロ広場からのフィレンツェの景色は有名だが、見下ろすだけでなく同じ目線にあわせてみると、
その様子が分かるはずだ。ヴィラが点在する緑の丘がドゥモのクーポラの後ろに広がっている。
ドゥモのクーポラの上からなら、まさに町の中心から360度を眺められるので、その様子がよく分かると思う。
私の住まいは中心街から自転車で30分くらいのマンションが並ぶ住宅街だが、
セッティニャーノ・フィエーゾレの丘のふもとであり、近所の至るところからその丘を眺める事ができる。
そしてその丘は私の大好きな場所の1つで、本当のフィレンツェの町全体が眺められる。
その場所からも、ドゥモはすぐに見つけられる。まさに、フィレンツェのシンボルなのだ。

普段過ごしていると、慣れもあって何とも思わないどころか、嫌なものばかりが目につく。
観光と生活は違うのだ。しかし、2年前に3ヶ月間日本に帰っていた後に戻ってきた時に見たドゥモは、
10年前に初めて旅行で来た時と同じ感動を呼び起こした。
ああ~、やっぱり私はここが好きなんやな、と改めて思った。

2004.7


→ フィレンツェの人


© Rakuten Group, Inc.